社員教育の目的とオススメの教育方法を解説!導入に向けた助成金制度も紹介
「社員教育を導入したいが、自社に合った教育は何なのかわからない」
「形式的な教育ではなく、社員の成長を促せる効果的な社員教育をつくりたい」
そのようなお悩みを抱えている方に、この記事が参考になるでしょう。
この記事では、社員教育の目的や種類を解説します。それだけでなく、社員教育の費用にお困りの方のために、教育費用を助成する制度も紹介しています。
この記事を読めば社員や自社の成長のために、どのような社内教育が適しているかがわかるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
なぜ社員教育は必要か
企業が絶え間なく成長するためには、社員の資質向上を図る社員教育は欠かせません。
社員教育を行わないと、業績の低下や社員のモラルの低下が起こります。そのような企業では、社員のモチベーションの維持は難しいでしょう。
企業が持続的に発展するためにも、社員教育は不可欠なのです。
そもそも社員教育とは
社員教育とは、社員に働くうえで必要な知識やスキルを身につけさせるものです。一般的な社会常識やマナーのほか、企業独自の知識やスキルを身につけてもらうものもあります。
社員教育の目的は、事業を拡大し利益を出すためです。とはいえ自社で活躍できる人材になればいい、などの考えは無責任でしょう。社員を雇っている側は、社員の人生を背負っているといっても過言ではありません。
社員の社会的な成長を助ける社会的な意味でも、社員教育は義務といえます。
社員教育の目的
社員教育は社員に、働くうえで必要な知識・スキルを身に付けてもらうために行います。
成長している企業は大手であれベンチャーであれ、社員教育に特に力を注いでいます。
ではその目的は何でしょうか。以下で主な目的を3つ取り上げて解説します。
社員教育の目的の中でも、生産性の向上は特に大切です。
社員の資質向上は、生産性向上に直結します。そのため、必要な知識・スキルの教育を行う社員教育は非常に重要になります。
ただし、個人のスキルアップだけで、企業の生産性を向上させるのは難しいでしょう。
そのため社員教育では、どのように各社員のベースとなる能力を揃え、組織としてスキルアップできるかを考えなければなりません。
企業理念や方針を社員に浸透させるのは、社員が共通の意識を持つうえで大切な要素です。
理念を知れば企業の志や存在意義など、企業の重要な考え方がわかります。また、方針を理解すれば、ブレずに行動できるでしょう。
さらに企業の目的を知ると、結束力や士気の向上が期待できます。その結果、社員が自社について考え、自ら行動するための土台へとなるのです。
社員教育では社員としての自覚や、企業の代理として取引先等と接する意識を育てます。
社員教育を通し、企業の代表として取引先や顧客とふさわしい態度で接する姿勢を学びます。その結果は、取引先からの信頼といった形で帰ってくるでしょう。
また社員の意識を高めるのは、自社に対する社員のイメージの向上にもつながります。
多くの社員が自社のイメージを高く持ち、イメージに沿った行動をとれば、取引先や顧客に与えるブランドイメージも築かれていくでしょう。
社員教育の種類
社員教育は入社後、勤続年数や成長に合わせて継続して行われます。
社員の成長段階に合わせた社員教育の種類を解説します。
社員教育を実施するタイミングや、社員の成長段階に相応しい教育をすれば、より高い効果が期待できるでしょう。
入社して間もない段階で行うのが、新入社員研修です。
新入社員は、社会人として必要なスキルやマインドが整っていません。そのため、入社直後にビジネスの基礎的な社員教育を行います。
具体的には社会人として必要なマインドセットやビジネスマナー、ロジカルシンキングといった社員研修が行われます。
そのほかの新入社員への社員教育は、日常の業務の中で行うOJT(後述)が一般的でしょう。
OJTは実際に仕事を行いながら、担当の先輩社員から指導を受ける研修です。必然的に担当となる社員によって、社員教育の質に差がでてきます。そのため、担当社員の指導も必要になってきます。
新入社員研修が終わり部署に配属された新人職員は、配属先の部署で実際に仕事を行います。徐々に仕事に慣れた段階で、若手社員研修の実施です。
若手社員研修では「一人で仕事を全うする力」の獲得を目指します。
仕事に慣れたところでさらに成果をあげるため、業務効率化や自立性、主体性の獲得が目標となるでしょう。
特に若手社員は、主体性の向上が課題に挙げられます。与えられた仕事をこなせても、主体的な行動をとれない社員も珍しくありません。
「自らプロジェクトの案を提出する」「不明な点を上司に相談する」
このような受け身ではなく主体的な行動が自然に取れるように、若手社員研修で学ぶのです。
中堅社員になると後輩も多くなり、部下がいる社員も多くなります。たいていの仕事は、一人で行えるでしょう。しかし離職率が高くなるのもこの年代です。
企業の利益のためにも、優秀な人材の流出を防ぐのも大切です。その意味でも研修を行い次のステップを提示して、モチベーションを維持するのが大切になります。
中堅社員研修では、主に部下の指導方法やチームビルディングについての研修が行われます。また、管理職を補佐する立場の方も多いため、管理職と現場を調整し、成果を上げる研修も必要でしょう。
さらに管理職候補となる中堅社員にはマネジメント、リーダーシップなどの研修を進めていくのも重要です。
管理職に行われる研修は、より高度な内容になります。
特に重要なのは、マネジメントに関する研修です。組織を運営するために必要な経営資源(いわゆるヒト・モノ・カネ)の管理は、管理職に必須の能力といえます。
ほかにも、プロジェクトを効率的に進めるプロジェクトマネジメント研修、ハラスメントや情報セキュリティについて学ぶコンプライアンス研修なども必要でしょう。
また、さらに高みを目指している管理職は、経営層に近い立場での研修になります。組織戦略やリスクマネジメントなど、より経営者の視点に立って考える力を養います。
社員教育の方法
社員教育と一口にいっても、企業によってその種類や形態はさまざまです。
主な方法として、社内で行う社内教育と社外に出て行う社外教育に分けられます。
教育を行う場所の違いで、それぞれにメリット・デメリットが異なってきます。
社内教育は会社の上司や先輩社員などが教育担当となり、部下に実施します。
社内教育は自社のメソッドや経験を伝えられるなど、メリットも多くありますが、デメリットも生じます。
メリット・デメリットは、以下の表を参考にしてください。
社内教育のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
・費用を抑えられる →教育担当も会場も社内で準備するため特別な費用がかからない |
・教育担当者の業務時間を割く必要がある →担当者が社内教育にかかりきりになると実務にも負担が生じる |
・専門的な内容を伝えられる →その会社独自の価値観やユニークなノウハウなどを継承できる |
・教育の質が教育担当者に左右される →社内教育の効果を一定の水準にするために教育担当者の育成など新たなコストがでてくる |
・自社の経験を伝えられる →経験豊富な社員の仕事手順や重要なポイント等をキャリアの浅い社員に伝えられる |
・マンネリ化しやすい →社内教育の実施が目的にならないように定期的に教育内容をブラッシュアップして実務に即したものにアップデートしなければならない |
・自社に合った教育内容を用意できる →業界・職種ごとに自社の実務に即したものを1から創れる |
|
・実施時期やタイミングを調整できる →会社の都合がいい時期を選べる。 |
・社内教育後もフォローできる →実務においてサポートや振り返りを行い知識・技術の定着を図れる |
社内教育のメリット・デメリットを理解したうえで、社内教育の具体的な手法を解説します。
OJT(On the Job Training)は実務を通して、必要とされる知識・スキルを身につけます。
実務を行い、さまざまな経験を積みながら、必要な知識・スキルを学べます。そのため即戦力化を期待できる教育です。
一方で教育担当となる社員の業務を圧迫し、負担になるのも事実です。また教育担当者の知識・スキルだけでなく、仕事への取り組む姿勢なども、教えられる側に強く影響します。そのため、適任と思われる教育担当者の選出が、カギとなるでしょう。
ばらつきなく効率よく人材育成を行うためには、マニュアルは必須といえます。
その理由は以下のとおりです。
能力に関係なく一定以上の成果が出せる
仕事の引き継ぎがスムーズになる
マニュアルが手本となるため効率的な育成が可能
チェックシートとの併用でミスを減らせる
継承し繰り返し使える
マニュアルでやるべきことが明確になります。日頃から繰り返し使用すれば、自然と業務も覚えられるでしょう。
その反面マニュアル通りに行動するのが習慣になり、自発的な行動や発想を妨げる事態が懸念されます。
また、マニュアルの質は作成者の能力に左右されます。そのためクオリティの低いマニュアルだと、効果は期待できないでしょう。
ジョブローテーションとは、社員の能力向上のために、人事計画に基づいて行う戦略的な人事異動を指します。
経営戦略の一環として行われる人事異動とは違い、ジョブローテーションは人事戦略に基づいて行われます。
配置先の業務内容の学習や、社内でのコネクションを作るために行われるのが一般的でしょう。そのため、数か月単位で異動を繰り返すところが多いようです。
また、ジョブローテーションを利用し、本配属前に新入社員の適性を各部署で判断してミスマッチを防ぐ使い方もあります。
社外教育は外部の人間、組織に研修を依頼する教育方法です。
その形態は、「カリキュラムの作成を外部講師に任せる」「社外で開催されるセミナーに、社員を参加させる」などがあります。
社外教育には、社内研修では得られない効果やメリットがある一方、デメリットも存在します。メリット・デメリットは、以下の表を参考にしてください。
社内教育のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
・業務に注力できる →社内の人間が研修を準備しなくて済むため本来の業務に注力できる |
・費用がかかる →講師代・委託代・会場費といったコストがかかる |
・優秀な講師を活用できる →自社にはないノウハウを持ったその分野の専門家が知識・スキルをもたらしてくれる |
・時間がかかる →自社に合った講師・カリキュラムの選定に時間をかけてリサーチする必要がある |
・新たな着眼点に出会える →外部講師は自社の社風に囚われていないため独特の発想を導いてくれる |
・専門業務・会社の風土・社外秘の内容などの研修はできない →研修内容が専門的になれば講師を探すのが困難になる その会社独自の風土や社外秘の内容などは外部の者には教えられない。 |
・ビジネスチャンスに結びつく →講師やほかの受講生など多種多様な人と交流するため人脈を広げる機会となる |
・自社で完全にコントロールできない →社外研修は期間や場所が限定される 公開型研修の場合スケジュールがきめられているため調整が難しい |
メリットデメリットが分かったところで、代表的な社外教育を見ていきましょう。
主な社外教育には、以下のものがあります。
Off-JT(Off the job Training)とは、職場外研修を指します。社外で開催されるセミナーなどに参加し、知識やスキルを学ぶのが一般的でしょう。
Off-JTには「複数の社員を教育できる」「一定のクオリティの教育を受けられる」などのメリットがあります。
一方で、研修参加者が実務を離れるため、その影響は大きいものでしょう。また、職場外研修では、宿泊費・交通費が必要です。
費用や工数がかかるデメリットがあるのも、社外教育の特徴です。
eラーニングは、インターネットを活用した学習方法です。Off-JTに比べてコストが低いのが、特徴です。自宅時間や通勤時間など、時間や場所を選ばず活用できるのも魅力でしょう。
また、教育担当者を用意する必要がなく、研修参加者が実務を離れる時間も少ないため、企業の生産性を落とさず実施できます。
その反面、効果は研修参加者のモチベーションに左右されがちです。また効果の測定も難しい側面もあります。
そのため進捗を定期的に確認し、適宜1on1面談を実施するなど、モチベーション維持や効果測定の仕組みが必要です。
通信教育は、eラーニングなどと同様に、時間や場所を選びません。
ただし、紙媒体で学習できる点や、記述式の課題で考える力を強化できる点が大きく違います。
一般的な通信教育は紙媒体のテキストを使用します。
マーカーを引いたり書き込みをしたり、自由にテキストを使えるのは、紙媒体独特のものでしょう。
デメリットはeラーニングと同じく、モチベーション管理の難しさが挙げられます。進捗を定期的に確認しなければならないのも同様でしょう。
人材開発支援助成金を活用して費用の負担を減らそう
人材開発支援助成金は平成29年から、「キャリア形成促進助成金」から現在の「人材開発支援助成金」に変わりました。
名称変更とともに構造再編、廃止、変更があり、労働生産性を向上させている企業に対して、助成金を引き上げるなどの改善も行っています。
人材開発支援助成金とは、人材の職業訓練・開発を実施した企業に対して訓練の費用を一部助成し、人材が専門知識や技能を身につけるための人材育成をサポートする制度です。
雇用保険法第4条に規定する被保険者のうち、契約社員、派遣社員と短時間労働者を除いた労働者が対象となります。
人材育成にはそれ相応の費用がかかります、社員を多く抱える企業にとってはその負担は相当でしょう。したがって、人材開発支援助成金を活用できるのであれば、ぜひともその利用を考えてみてください。
本助成の対象となる訓練コースには、以下のコースがあります。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 特別育成訓練コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 人への投資促進コース
訓練内容によっては、助成対象とならない場合があるので注意しましょう。
人材育成の訓練に含まれる費用とは以下のものがあります。
- 部外の講師への謝金・手当
- 部外の講師の旅費
- 施設・設備の借上費
- 学科や実技の訓練に必要な教科書等の購入・作成費
人材開発支援助成金の申請書等は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
人材開発支援助成金を利用すれば、費用をかけずに社員の能力を開発し企業の生産性アップが期待できます。しかし、デメリットもあるので、注意が必要です。
まず、人材開発支援助成金には訓練コースが設定されています。訓練コース毎に利用条件が異なり、コースによっては企業規模やOJT と Off- JT などの実施形態によっても、助成額が変わってきます。実施する社内教育が、助成金の利用条件に沿っているかはしっかり確認しましょう。
また申請に時間がかかるのも、デメリットと言えます。
本助成金は所定の手続きと、書類の準備が必要になります。申請は訓練実施前後にも行う必要があるため、多少の時間がかかることを考慮しましょう。
さらに、申請してから実際に助成金を受け取るのにも、時間がかかります。そのため実際に助成金を受け取る前に、一時的に企業が訓練費用などを建て替えるケースもあるようです。助成金があるとはいえ最低限の資金が必要です。
社員教育の導入手順
社員教育を導入する際は自社の現在の課題を抽出し、教育する目的や解決するべき問題を明らかにします。課題が明らかになったら、教育の対象者と目標を設定します。
目標は何をどこまで解決するのか、何回の教育で解決できるのか、より具体的に設定するのが望ましいでしょう。
時間や予算に余裕があるのなら、時間をかけることで効果が上がります。現実的な目標を設定し、段階的にレベルアップを目指しましょう。
社員教育を実施するときは、タイミングも考慮しなければなりません。自社や社員の都合を考慮して、スケジュールを調整し計画を立てましょう。
社員教育の目標や対象者、実施時期が決まったら、社員教育の実施方法を決めます。社員教育は、これまで解説したとおり様々なものがあります。自社の事情や対象者の課題などに合わせて、最適な教育方法を選びましょう。
最後にフォローアップの方法を決定します。社員教育は、学んだスキルや知識をしっかり身につけ、実際の仕事に活かせなければ意味がありません。そのため、社員教育後にアンケートやレポートの提出などの、フォローアップを通した振り返りが大切です。
まとめ
社員教育は社員の資質向上を図れば、企業の成長につながります。
その種類はOJTやジョブローテーションなどの社内教育、Off-JTやeラーニングなどの社外研修など多岐にわたります。どの教育がふさわしいか、自社や社員の課題をしっかり見極めて選択しましょう。
費用負担がネックで社員教育ができないとお悩みなら、訓練費用を一部助成する「人材開発支援助成金」を活用するのをおすすめします。
申請や助成金の受給には、時間がかかります。しかし、コストをかけずに人材育成をしたいなら、一考の価値はあるでしょう。
社員教育を効果的に行えば、会社も職員も継続的な成長が期待できます。適切な課題の抽出や目標設定を行い、社員教育を効果的なものにしましょう。
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